📌 この記事のまとめ
- 「家賃は捨て金、ローンは資産」という主張は半分正しく、半分間違い
- 購入にも「捨て金」(利息・管理費・修繕費・固定資産税)は存在する
- 30年間で見ると、エリアと条件次第では賃貸の方が実質コストが低いケースがある
- 「賃貸か購入か」は感情論ではなく数字で判断すべき
「家賃はもったいない」論の正体
「毎月の家賃は払い続けるだけで何も残らない。同じお金をローンの返済に充てれば家という資産が手に入る」——この主張は不動産業界や購入派の間でよく聞かれます。
この考え方には一定の合理性がありますが、「購入すれば必ず得をする」という結論は誤りです。なぜなら、購入にも大量の「捨て金」が存在するからです。
購入にも「捨て金」は存在する
| コスト項目 | 賃貸 | 購入(3,000万円・35年ローン) |
|---|---|---|
| 利息総額 | なし | 約240万円(金利0.7%)〜約1,000万円(金利2%) |
| 固定資産税(35年) | なし | 約140〜210万円 |
| 管理費・修繕積立(35年) | なし | 約700〜1,200万円(マンション) |
| 火災・地震保険(35年) | なし(家財保険のみ) | 約35〜70万円 |
| 諸費用(購入時) | 敷礼金2〜3ヶ月 | 物件価格の3〜7% |
| 「捨て金」合計概算 | 家賃×年数のみ | 約1,100〜2,500万円(利息・税・維持費) |
3,000万円の物件を金利0.7%で35年借りた場合、利息だけで約240万円。管理費・修繕・税金を加えると購入でも1,000万円超の「回収できないコスト」が発生します。
「資産になる」は本当か?エリア別の現実
購入が有利な最大の根拠は「物件が資産として残る」ことです。しかしこれはエリアによって大きく異なります。
| エリア | 30年後の資産価値(購入価格比) | 賃貸との差 |
|---|---|---|
| 東京都心・港区・渋谷区 | 100〜130%(値上がりも) | 購入が大幅有利 |
| 東京23区平均 | 80〜95% | 購入がやや有利 |
| 首都圏郊外 | 60〜80% | 条件次第でほぼ互角 |
| 地方政令市 | 50〜70% | エリアによって逆転も |
| 地方中小都市・郊外 | 30〜50% | 賃貸が有利なケースも |
地方中小都市では、30年後に物件価値が大幅に下落するケースが珍しくありません。「資産になる」という前提が崩れると、購入の優位性は消滅します。
賃貸が有利になる4つの条件
条件①:家賃が購入コストより大幅に安い
地方や郊外では、同じ広さの物件で「賃貸の方が月々のコストが明らかに安い」ケースがあります。家賃が購入時の管理費・修繕費・ローン返済の合計より低ければ、差額を投資に回す方が資産形成として有利です。
条件②:住む期間が短い・不確定
購入には初期費用(諸費用3〜7%)と売却時のコスト(仲介手数料3%等)がかかります。10年以内に住み替える可能性がある場合、これらのコストが回収できず損失になります。
条件③:物件価値が下落するエリア
人口減少が進む地方では、購入した物件の価値が想定以上に下落するリスクがあります。「資産になる」どころか「負の資産」になる可能性も。
条件④:頭金を投資に回した方が有利な場合
頭金500万円をインデックスファンドで運用した場合(年利5%)、30年後には約2,160万円になります。この機会費用は「資産としての持ち家」と比較する必要があります。
賃貸派の合理的な資産形成戦略
「賃貸で払い続けるだけ」は確かにもったいないですが、賃貸を選びながらも合理的に資産形成できます。
同条件で購入した場合の月返済額12万円(ローン9.5万円+管理費等2.5万円)との差額2万円を毎月つみたてNISAに投資。30年間で複利5%運用すると約1,660万円の投資資産が形成される。この資産と購入時の「売却後実質コスト差」を比較して判断すべき。
結論:「もったいない」の定義を変える
家賃が「もったいない」かどうかは、それ単体で判断するものではありません。本当に考えるべきは「賃貸で支払う金額」と「購入で支払う金額(利息・税・維持費含む)」の差であり、さらに「物件の資産価値の変動」を加えた総合的な損得です。
「家賃はもったいない、だから買う」という短絡的な判断ではなく、シミュレーターで自分のケースを数字で確かめることが最も重要です。